冬季練習になると、
「どれくらいの練習量が正しいのか?」
「冬は追い込めば追い込むほど強くなるのか?」
と疑問に感じる人が多いのではないでしょうか。
実は、冬季練習は量を増やせばいいわけではありません。
追い込みすぎることで逆に足が速くならず、春以降に伸びないこともあります。
ここでは、僕自身の経験と短距離の科学的根拠を踏まえて、
冬季に最適な練習量と、その理由をお伝えします。
1. 冬季の練習は週5日がベスト
僕が冬季でおすすめする練習頻度は 週5日 です。
その理由は、
スプリント能力は“質の高い練習”でしか向上しない からです。
そして短距離という競技は筋肉よりも 神経系(CNS)への負担が非常に大きく、
この神経系の回復には筋肉以上の時間が必要です。
● 神経系と筋肉の回復時間の違い
- 筋肉の回復:24〜48時間
- 神経系の回復:48〜72時間(筋肉より長い)
つまり筋肉が回復していても、
神経が回復していなければ質の高いスプリントは絶対にできません。
さらに研究では、
- 最大速度(MaxV)は疲労がある状態では向上しない(Clark 2010)
- 高質スプリントは週2〜3回が最適(Nagahara 2017)
ということも分かっています。
これらを踏まえると、
高質なスプリント ➝ 神経回復 ➝ 高質なスプリント
というサイクルを最も効率よく回せるのが 週5日 になります。
逆に、
週6〜7日練習してしまうと神経回復が間に合わず、
質の高いスプリントができなくなり、スピードが落ちてしまいます。
2. 1日の練習量
僕自身、冬季の1日のスプリント量は 600m以内 に抑えていました。
冬季は量より質が重要で、
疲労によってフォームが崩れたり、接地時間が長くなる前に終えることが大切だからです。
● スプリント練習の例
- 120m × 3〜5(休憩10〜12分)
- 120m × 3(本数間ウォーク)×2セット(セット間休憩15分)
- 60m × 3(本数間ウォーク)×3セット(セット間休憩10分)
ポイントは 常にフォームとスピードの質を保てる距離で終えること。
研究でも、
疲労が溜まると接地時間が延びたり、反力が低下することが示されています(Morin 2015)。
長い距離や走り込みをしすぎるとスピードが落ちるのはこのためです。
3. ウエイト練習
ウエイトは 1日60〜90分 を目安に、
メイン2〜3種目+補助2種目を1日で行い
全体としてメイン種目を五種目程度に定めていました。
● 僕が重視している主な種目
- クリーン
- ブルガリアンスクワット
- スクワット
- ベンチプレス
- デッドリフト
これらは爆発力・地面反力・全身の連動を高めるのに効果的です。
4. ウエイト後に流し
ウエイト後には流しを入れましょう
ウエイト後に“軽い流し”を何本か入れるのは、
神経系をスプリント動作に再適応させるためです。
ウエイト後の身体は
「筋力発揮モード」になっている状態で、
そのまま終わると筋力系の動作パターンが強く残ってしまいます。
ここで流しを入れると:
- スプリント特有の 接地時間の短さ
- 反力の方向性
- 地面→重心への伝達の連動
といったスプリント固有の神経パターンへ再適応できます。
これは
Post-Activation Potentiation(PAP)
Post-Activation Performance Enhancement(PAPE)
と呼ばれ、
- ウエイト後の爆発的動作(ジャンプ・加速)が改善する(Wilson 2013)
といった研究データが存在します。
つまり、
ウエイトで刺激した神経をスプリント動作に“引き戻す”ための工程が流しなのです。
5. スプリントとウエイトの頻度
- スプリント練習:週3〜4回
- ウエイト練習:週2〜3回
これくらいが神経系にも筋力向上にも最適です。
6. 冬季に絶対にやってはいけないこと
- 過度な走り込み(200m×10本など)
- 疲労が抜けていないのに走り続ける
- 冬だからとスプリントを減らしすぎる
- とにかく量を増やすことを正義だと思うこと
冬季の目的は スピードと技術を落とさないこと。
量に逃げず、“質の高いスプリント”を積み重ねることが冬季の基本にしていきましょう。
コメント